
こんにちは。移住ライター兼作家の瀬口あやこです。
「いいところだよ、静岡は」
以前勤務していた会社の同僚が口癖のように言っていた言葉を、この地に移り住んでからよく思い出します。何がいいって、気候が良い。そして人が温かい。
そして何より、静かに情熱を灯している人たちがいるのです。
この連載では、その熱を少しでも外へ届けられたらと、ライター兼作家である私、瀬口あやこが、見たもの・聞いたものをつづっていきたいと思います。
今回訪ねたのは、静岡県浜松市の中心部。幹線道路から少し路地へ入った住宅街に、竹灯籠づくりの小さな工房があります。
「工房といっても、自宅の自転車置き場なんですけどね」と笑うのは、EcoClair(エコクレール)さん。竹を採りにいくところからすべて自身で手がける竹灯籠アーティストです。

制作を始めたきっかけは、なんと「自宅の庭が暗すぎたから」。
自分のためにつくった竹灯籠が、「見せるもの」になり、そして「魅力を共有するもの」になっていく。その過程を聞きました。
豪快な工程の先に宿る、やさしい灯り

月にお花、花火にうさぎ…
竹に開けた丸い穴から漏れ出る灯りに、さまざまなモチーフがやさしく浮かび上がります。
とても繊細なEcoClairさんの作品。ぼんやり静かに眺めるのがぴったりな竹灯籠ですが、その制作過程はうって変わってかなり豪快です。

電動ノコギリを使った竹林での竹伐採に始まり、竹をバーナーで炙り浮いてきた油を拭き取る油抜き、ドリルやジグソーでの穴あけ作業…。
ちなみに、EcoClairさんがいちばん好きなのは油抜きの工程なのだそう。
「地道な作業ですが、すごくきれいに竹の色が変わるので、なんだか通販番組をやっているような気分になります。『ほーら見てください奥様!こんなにきれいになりましたよ!』って(笑)」
部屋の中で灯りを眺めるのとは正反対の、どちらかというとDIYに近い印象を受ける制作過程。
EcoClairさんは、そのギャップも含めて竹灯籠が好き、と語ります。
「工具を使って無心で作業している間はストレス発散。穴を開ければ開けるほど模様ができあがるので、どんどんテンションが上がります。
でも、最後に灯りをともした瞬間、作業中とはまったく違う雰囲気を見せてくれる…その優しいこと。ワクワク制作して、完成した姿を見て感動できる。すべての工程が癒しで、いつも『何回楽しませてくれるの?』という気持ちになります」
我が家の庭に灯火を——制作の始まりは切実な願いから

いまでは竹灯籠愛にあふれるEcoClairさん。ですが、制作を始めたきっかけは、意外にシンプルなものでした。
さかのぼること2022年。
久しぶりに遅い時間に帰宅したEcoClairさんは、我が家を一目見て、「暗い!」と立ち尽くしてしまいました。家の前に庭がある自宅は、道路から玄関までの間にまったく灯りがなく、真っ暗だったのです。
外構工事をするか、ソーラーライトでも置いてみるか…。家族と話し合うなかで、ふと「自分で灯りをつくれないかな?」と思いたちました。そこでネットを検索したところ、見つけたのが竹灯籠の写真でした。
「これって自作できるの?じゃあやってみよう!と行動に移してからは早かったですね。DIY好きの夫を手伝って作業することもあったし、工具を使うことに抵抗がなかったのも大きかったと思います。通販で竹を買って、ネットでつくり方を調べてやってみたら、すごくきれいにできて、うれしかったです」
庭に自分好みの灯りができた。ですが、そこで止まらないのがEcoClairさんです。
制作過程の楽しさと、ご近所さんの「すてきだね!」の声に後押しされ、2個、3個と数が増えるうちに、その視線は自然と、家の周りにある竹林へ向いていきました。
「浜松では、放置竹林の拡大がよく問題になっています。なのに、わざわざネットで購入するのもどうなんだろう、と。せっかく竹を使うのだから、私にも何かできないかな、と思い始めました」
そんなとき、当時幼稚園に通っていた娘さんが七夕飾りを持ち帰ってきました。先生に「この笹はどこで調達されているんですか?」と尋ねてみると、ある先生のご自宅の竹林が出どころだとわかりました。さっそくお願いして分けてもらうと、その話を聞いた友人たちが「うちが持っている山にも竹が生えてるよ」と次々に名乗り出てくれたのだそう。
「もうびっくりでしたね。いま竹を切らせてもらっているのは、そのときに声をかけてくれた方の竹林なんです」
地域のつながりのなかで、作品づくりはさらに加速。翌年には初の作品展示を叶えます。「再生」を表す”Eco”とフランス語で「明るい」「光」を表す”Clair”を組み合わせて屋号にし、出品しました。

共有する楽しさ。広がる活動の輪

2025年には竹灯籠づくりのワークショップも開催しました。
「お客さんのなかに『私もつくってみたい!』と言ってくださった方がいて、ぜひこの楽しさを共有したくて始めました。みなさん本当にコツを掴むのが早くて、ドリルでの穴あけは『スカッとする!』と好評です」
「簡単に説明して、あとは見守っているだけ」と微笑むEcoClairさん。ワークショップ参加者さんから学ぶことも多く、完成品を見ては毎回感動するのだそうです。
最近は、細い竹に小豆や米を入れてつくるマラカスづくりや、直径約20cmもの太い竹を花器がわりにした門松づくりのワークショップも行いました。地元の花屋さんとのコラボで生まれた門松は、参加者にも好評でした。

「竹灯籠に使う太さ以外の竹の使い道に、いつも悩んでいました。捨てるのももったいないし、なんだかかわいそう、と思って。なので、昨年は新しい竹の使い方を見つけて、充実した一年になりました」
生まれ育った土地で、灯りをともす

最後に、こんな質問を投げかけてみました。
“浜松で竹灯籠をつくることは、ご自身にとってどんな意味がありますか?”
「生まれ育ったこの土地で、周りの自然と関わりながら活動ができるのは素直にうれしいです。『自然を守る!』なんて、大きなことは言えないにしても、少しでも役に立てたら、と思っています」
これからは、昼間のイベントにも参加したいと考えているEcoClairさん。
輪切りにした竹のリングでつくったガーランドや、竹の皮を裂いてボール状にした装飾など、明るい場所で映える作品づくりを計画中です。
さらに、竹札で作る名入れキーホルダーや、お家に飾れる竹の花器など、竹を使った新しいアイテムも続々と生まれています。
また、EcoClairさんが用意した竹の花器に、門松づくりワークショップでコラボしたお花屋さんがアレンジメントをするという楽しい企画も。
現在はオーダーメイドの竹灯籠づくりも受け付けているほか、イルミネーションイベントへの出展依頼も受付中。「暗い場所を灯りで盛り上げたいイベントがあれば、ぜひお声がけください!」とのことです。
最新情報は、ぜひEcoClairさんのInstagramをチェックしてくださいね。
「自宅の庭が暗い」から始まったEcoClairさんの作品づくり。
自身の中に生まれた熱を、周囲に配り歩くように。地域の人とつながりながら、これからもその光は静かに、でも確かに広がっていくに違いありません。
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