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【パン職人連載コラム】暑くなる季節も、迷わずパンに手を伸ばしていたい

こんにちは。パン職人であり、ライターの中村ことはです。

パンには、焼きたての香りだけではなく、土地の記憶や季節の気配、人の手しごとが静かに宿っています。
そし​て、そんな背景を知るだけで同じパンでも味わい方がふっと変わる。
パン好きなら、一度は感じたことがあるかもしれません。

そんな“パンの奥行き”を、​浜松在住のパン職人×ライターの私が、毎月そっとお届けする​連載コラム。
読み終わったら思わずパン屋さんへ寄り道したくなる──そんな世界へご案内します。

暑くなる前にパンとの付き合い方を考える

今年は4月に、静岡市で早くも30℃を記録した日が出ましたね。爽やかな季節のはずの5月でも、晴れて気温がぐっと上がる日があります。「4月からこんなに暑くて、7月や8月にはどこまで暑くなるんだ…」と考えてしまったのは、きっと私だけではないはず…笑

これから待っている暑い暑い日々を前に、やはり気になるのはパンのことです。

冬場は常温に置けていたパンも、夏場はそうもいきません。
少しくらい大丈夫、と思っていたらカビが...!という経験をしたこと、ありませんか?
パンは立派な生鮮食品。思っている以上に繊細な存在なんです。

そして、夏場のパンでよく聞かれるのが「どこまで冷凍していいの?」「その判断ってどうしてる?」という質問。今回は、パン職人として日々パンと向き合う中で感じている、パンとの付き合い方について考えていきたいと思います。

パン職人はどう考えているのか

実はこの季節、私が働くパン屋でもお客様から質問をいただく機会が増えます。
特に多いのが、「正解がわからない」「冷凍した方がいいのか迷う」というお声です。

「このパンは冷凍ってできる?」「どうやって保存するのがいい?」

そんな質問をいただいたときはいつも「パンの中に何が入っているかを考えてみてください」とお伝えしています。例えば、食パンやクロワッサン、ロールパンなど、具材が入っていないシンプルなパンは冷凍向きです。夏でも冬でも、私は買ってきたら食べる分ずつに分けて冷凍しています。

一方で、さまざまな具材が入っている菓子パンや総菜パンは、最も判断に迷うのではないでしょうか。

私は、生クリームや生の果物、マヨネーズやじゃがいもが入っているパンは、冷凍しないようにしています。解凍したときに、水分が出てパンが水っぽくなってしまったり、味や食感が変わってしまうからです。
見た目は変わらないのに、パンを一口食べて泣きたくなった経験は、もう数えられないほど…
こうやって考えてみると、パンが冷凍に向いているかどうかは、

中に入っている具材は何か
解凍したときに状態が変わらないか

の2つで考えてみると、シンプルに判断できる気がしています。

怒られるかもしれないけど、冷凍しない場合もある

ここまで「冷凍」の話をしてきましたが、実は夏場でも冷凍しないこともあるんです。

それが、翌朝には食べると決めているとき。
私は、冷蔵庫に入れて保存しています。

パン好きの方なら「え!?」と驚かれたかもしれません。
パンは冷蔵すると劣化すると言われているので、おいしさを考えるとあまり良い方法ではないんです。

しかし、冷凍すればその分食べる前の手間が増えます。私は天性の面倒くさがりなので、解凍のひと手間を省きたくなるんです。

パンは、調理せずそのまま食べられることも魅力のひとつ。翌朝くらいまでなら冷蔵で十分おいしく食べられます。一般的にはNGとされることでも、実際に食べてみると「意外と大丈夫だな」と感じることもあるんですよ。

また、火を使うキッチンや閉め切った個室などの室温が上がりやすい部屋ではなく、エアコンの効いた部屋があるならそちらに置いておくこともあります。

パンは、毎日の暮らしの中にあるもの。「いつ食べるか」「どこに置くか」を考えながら、あまり縛られすぎず、そのときに合った形でパンと付き合っています。

も、パンに手を伸ばしていきたい

そんなふうに考えていますが、やっぱり思うんです。
せっかく購入したパンは、おいしいまま長く楽しみたいな、と。

なかなか行けないパン屋さんであればなおさら、「あれもおいしそう」「あ、こっちも食べたい」とついつい手が伸びてしまい、とても1日では食べきれない量を買ってしまうこともしょっちゅう…

そんなときは、そのパンを作ったひと・販売しているひとにそっと聞いてみるんです。
パン屋さんとの会話から思いがけないお話が聞けることもあって、それが楽しみのひとつにもなっています。

もちろん、私の考え方が正解というわけではありません。
もっといい保存方法や判断の仕方も、きっとあると思います。

ただ、パンとの出会いは一期一会。
夏には夏の、その季節だけにしか出会えないパンがあります。

だからこそ、私は「食べきれないかもしれない」と迷うよりも、気になるパンには手を伸ばしていたい。
無理のない付き合い方を探しながら、これからもパンを楽しんでいけたらいいなと思っています。

中村ことは(パン職人/ライター)

大手や仏留学を経て、現在は浜松でパン職人とライターを兼ねるパラレルワーカーとして活動中。コロナ禍や怪我を転機に、パンへの情熱と言葉を編むスキルを掛け合わせ、自分らしいワクワクする働き方を模索中。

Information 中村ことは(パン職人/ライター)
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文:パン職人/ライター 中村ことは